R5年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)交付申請書抜粋
研究課題名(課題番号) | 特発性造血障害に関する調査研究(23FC1024) |
---|---|
研究代表者 | 黒川峰夫(東京大学) |
研究事業予定期間 | 令和5年4月1日から令和8年3月31日までI期目3年計画の1年目 |
研究組織
研究者名 | 分担する分担する研究項目 | 所属機関・部局・職名 |
---|---|---|
黒川 峰夫 | 研究全体の総括 | 東京大学・医学部附属病院・教授 |
山﨑 宏人 | 再生不良性貧血 | 金沢大学・附属病院・准教授 |
三谷 絹子 | 再生不良性貧血 | 獨協医科大学・医学部・教授 |
石田 文宏 | 赤芽球癆 | 信州大学・医学部・教授 |
赤司 浩一 | 骨髄線維症 | 九州大学・大学院医学研究院・教授 |
保仙 直毅 | 溶血性貧血(特発性夜間ヘモグロビン尿症) | 大阪大学・大学院医学系研究科・教授 |
張替 秀郎 | 溶血性貧血 | 東北大学・大学院医学系研究科・教授 |
宮﨑 泰司 | 骨髄異形成症候群 | 長崎大学・原爆後障害医療研究所・教授 |
高折 晃史 | 骨髄異形成症候群 | 京都大学・大学院医学研究科・教授 |
鈴木 隆浩 | 骨髄異形成症候群・鉄過剰症 | 北里大学・医学部・教授 |
神田 善伸 | 造血幹細胞移植 | 自治医科大学・医学部・教授 |
真部 淳 | 小児再生不良性貧血・骨髄異形成症候群 | 北海道大学・大学院医学研究院・教授 |
太田 晶子 | 疫学調査 | 埼玉医科大学・医学部・准教授 |
南谷 泰仁 | ランゲルハンス細胞組織球症 | 東京大学・医科学研究所・教授 |
井上 義一 | ランゲルハンス細胞組織球症 | 近畿中央呼吸器センター・臨床研究センター・客員研究員 |
研究目的
特発性造血障害調査研究班は再生不良性貧血(AA)、赤芽球癆(PRCA)、溶血性貧血、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄線維症の5疾患を主な対象とし、本邦を代表する専門医・研究者が集い、疫学、病因、病態発生、臨床病態、治療に関する研究を行ってきた。その成果は特発性造血障害疾患の「診療の参照ガイド」(平成16年度初版、平成22、25、26年、令和元年改訂)にまとめられている。学会との連携体制も強化され、日本血液学会診療委員会の査読を受けている。各領域で患者実態調査、臨床疫学像の解析を通じて、客観指標に基づく診断基準、重症度分類の確立・改定、医療水準の向上を目指した研究活動に焦点を当てており、多くの疾患でレジストリが構築され、指定難病患者データベースも有効に活用している。より的確な診断法・治療法の確立のため、全国の診療施設や関係学会の参加の下に、各疾患の登録と検体収集を通じてさらに大規模な研究推進を行う。本領域では新規治療法が数多く登場しつつあり、新規治療法の適切な使用法や効果予測因子を探索する。
AAでは追跡調査や臨床試験・病態研究の成果を診療に反映させる。PRCAでは長期予後を知り診療上の課題を把握する。溶血性貧血では、PNHで国際PNH専門家会議及び日本PNH研究会(JPSG)との連携による全国規模の患者登録体制の確立、診断検査の一元化と抗体医薬の使用法の標準化、寒冷凝集素症でもJPSGとの連携による患者登録体制の確立を目指し、両疾患で病態進展機序を解明する。MDSでは、難病プラットフォームに移行したAA/MDSの前方視的登録研究を継続して一元的な症例登録と中央診断制度を構築し、データベースを共有して両疾患の臨床像とゲノム情報の紐付け、治療成績の把握、診断一致率の向上を目指し、各病型の特徴や予後、炎症性疾患との関連を明らかにする。移植の予後予測モデルの構築、臨床決断分析による決断支援を行う。骨髄線維症では予後データを収集し、新規治療の使用法や効果予測因子を探索する。小児領域では、小児血液・がん学会の前方視的登録と連携して希少疾患群の調査研究を推進し、疾患の取り扱いを標準化し、ガイドラインを策定する。LCHおよび類縁疾患では、LCH、成人肺LCH(PLCH)、エルドハイム・チェスター病(ECD)を含む各病型の治療開発、診断治療管理の標準化と診療ガイドラインの策定を目指す。
期待される効果
- 再生不良性貧血:TPO受容体作動薬導入後に治療を受けた患者のレジストリが構築される。
- 赤芽球癆:予後不良因子、輸血依存症例における鉄キレート療法の効果が明らかになる。
- 溶血性貧血:世界規模の症例登録を通じて国際基準が策定される。
- 骨髄異形成症候群:症例登録と長期追跡調査、ゲノム情報の統合で、本信頼性の高いデータベースを構築できる。MDS-RSを含むMDSの患者の実態を推定し、QOL維持・改善、合併症予防のための基礎的データを得られる。
- 骨髄線維症:新規治療法開発に向けて、わが国の疾患データが蓄積される。長期予後、予後予測因子、造血幹細胞移植の成績が明らかになる。
- 疫学:指定難病患者データベースを解析することにより、本邦における疫学像、診療実態、予後が明らかになる。また、データベースの有効活用、有用性評価と改善が進む。
- 造血幹細胞移植:患者背景に応じた移植時期の選択、移植前処置の選択などに役立つ情報を提供することができる。
- 小児科領域:全国規模の調査研究を通じて、多くの希少疾患の取り扱いが確立され、ガイドラインが整備される。
- LCHおよび類縁疾患:診療実態および診療上のunmet needsが明らかになる。PLCHと類似肺疾患との鑑別点が明らかになり診断治療管理が標準化される。
- 全疾患:3年目年度末に疾患別「診療の参照ガイド」の改訂を行う。
研究計画
関連諸学会の協力を得て各疾患の症例登録システムを充実させ、本邦の実態に即した治療法の開発・最適化に努める。得られた知見は、診断基準の策定や「診療の参照ガイド」の改訂(令和7年度予定)を通じて広く臨床現場での活用を図り、医療の均てん化に資する。
1. 再生不良性貧血(AA)(山﨑・三谷)
R5: | 新規発症AA対象のTPO受容体作動薬併用ATG療法の前向き試験を開始し、「骨髄不全症患者を対象としたHLAアレル欠失血球の検出」観察研究を継続する。「難病プラットフォーム 再生不良性貧血の症例登録・追跡調査研究」から、TPO受容体作動薬導入以後の本邦のAA症例を集積、1・2年生存率を算出する。 |
R6-R7: | 上記を継続し、結果を解析する。 |
2. 赤芽球癆(PRCA) (石田)
R5: | PRCA2016研究(UMIN000024807)登録症例の予後調査を継続し中間解析を行う。 |
R6-R7: | 予後調査を継続し、難治症例の実態調査を行う。 |
3. 溶血性貧血(保仙・張替)
改訂発作性夜間血色素尿症(PNH)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診療の参照ガイド、PNHの国際診断基準の周知、徹底をはかる。
R5: | PNH診療に関わるコンセンサス会議で国際診断基準の策定に関与する。PNH国際レジストリを推進し、解析計画を提案する。JPSGと連携し、AIHAの一病型、寒冷凝集素症(CAD)の国際レジストリの立ち上げに参画する。 |
R6-R7: | 国際レジストリを推進し、解析計画を提案、結果をまとめる。 |
4. 骨髄異形成症候群(MDS)
(高折)R5: | 新規診断AA、MDS、診断困難な血球減少症患者を前方視的に登録し、追跡調査とセントラルレビュー、合同検鏡会を行う。 |
R6: | データベースを難病プラットフォーム内で共有しゲノム情報と紐づける。 |
R7: | 臨床情報や患者標本情報、ゲノム情報を統合解析し、ガイドライン作成の基礎データを作成する。 |
(宮﨑)
R5: MDS患者のQOL調査の質問票を策定する。
R6-R7: 質問票を用いてQOL・臨床データを収集・解析し、臨床状態とQOLとの関連を解析する。
(鈴木)
R5:全MDS症例におけるMDS-RSを含むMDS各病型の頻度のデータを収集する。
R6-R7: 症例を集積し、本邦におけるMDS-RSを含むMDS病型の実態を明らかにする。
R5-7: | 低リスクMDS調査の解析を継続する。低リスクMDSの心血管合併症に関するアンケート調査を実施し、心血管合併症と治療・臨床データとの関連を明らかにする。 |
MDSにおけるVEXUS症候群などの炎症性疾患の調査研究を行う。
5. 骨髄線維症(赤司)
①原発性骨髄線維症については、前方視的患者登録のフォローアップ調査を継続し、②二次性骨髄線維症については、前方視的新規症例登録を継続する。長期予後とリスク因子を明らかにし、移植やJAK2阻害剤などの治療別のサブセット解析を行う。
6. 疫学(太田)
AA、PRCA、AIHA、PNHについて指定難病患者データベースを利用し、診断・治療・予後等の臨床疫学像を把握・解析する。
7. 移植(神田)
既存データを活用してMDS, AAの予後情報を抽出し、患者背景別の予後予測モデルを構築、予後予測に基づく移行確率を計算して、移植実施時期や移植前処置に関する臨床決断分析を実施する。
8. 小児(真部)
R5: | 遺伝性骨髄不全症候群の高頻度病型のガイドラインを更新し、小児AA, MDSガイドラインを作成する。GATA2遺伝子等の生殖細胞系列変異、炎症性腸疾患と骨髄不全・MDSなどに関する調査を開始する。 |
R6: | 上記ガイドラインを発表し、調査を継続する。 |
R7: | 小児・AYA世代MDS、炎症性MDSのデータをまとめデータベースを構築、治療研究を提案する。 |
9. ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)と類縁疾患 (南谷・井上)
R5: | LCH・関連疾患の調査を行い、unmet needsを明らかにする。LCH診断基準(案)のPLCH部分に治療管理案を加える。ECD患者検体の症例登録を行う。 |
R6-R7: | Unmet needsに対する治療開発、LCH診療ガイドラインの策定、PLCH診断治療管理基準(案)の検証・標準化・周知を行う。ECDのレポジトリ解析を行う。 |
研究事務局
東京大学医学部附属病院 血液・腫瘍内科
〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1
Tel 03-5800-6527
研究代表者 黒川峰夫
事務局担当 正本庸介・徳重淳二